現在、科学捜査におけるDNA鑑定はSTR(Short Tandem Repeat)が主流であるが、この方法は高度の変性DNAの場合は再現性のある結果が得られないという欠点を有する。これに対してSNP(Single Nucleotide Polymorphism)は変性に対してかなりの抵抗性を示すが、STR検査に比し個々の個人識別能力は低く、判定法はより複雑という欠点を有する。そこで今回、我々の開発したAPLP法(Amplified Product-Length Polymorphism analysis)を多数のSNPの同時判定に応用した。HapMapのデータベースから高度の多型性を示す47個のSNPと性別を加えた48個の遺伝形質は実験を通して取捨選択した。これらを4回に分けたPCRと4レーンの電気泳動での簡便な検出法を確立した。データベースに記されている各集団の遺伝子頻度から個人識別における総合同値確率を求めたところ、アフリカ、ヨーロッパ、中国、日本において、いずれも10のマイナス20乗レベルの個人識別には充分な値を示した。理論的にはこのシステムに4色の蛍光プライマーをラベルすれば、一度のPCRとシークエンサーによる自動判定が可能となるが、プライマー間での非特異的なバンドの出現の抑制や検出感度の均一化などの克服すべき課題点は少なくない。本システムをキット化する際の問題点を整理し、満足な結果が得られるまで修正・訂正を繰り返し、本法の完成を目指す。
|