ラットの大脳皮質に一定の大きさの損傷(挫傷)を作成し、経時的にその部と近傍の脳試料を採取し、Ca^<2+>依存性プロテアーゼμ-カルパイン活性化と基質であるフォドリン分解が、6時間をピークに増加し近傍に伝播することを見出した。コネクシンが構成するギャップ結合の阻害剤CBXで処置すると、損傷の伝播が抑制された。プロピディウム・イオダイド染色により、損傷部から皮質III・VI層にネクローシスが伝播することを見出した。これは、虚血による層状壊死と同様である。 以上の結果より、ギャップ結合を通じて細胞間にCa^<2+>過剰状態が伝播した結果、μ-カルパインが活性化され、細胞骨格が破綻した結果、ネクローシスが伝播していると解釈される。ニューロンのネクローシスに、ニューロン間、ニューロン・アストロサイト間、ニューロン・オリドデンドロサイト間等のGJが寄与している可能性がある。脳に発現しているコネクシン32・36・40・43のうち、どれが障害シグナルの伝達に寄与しているか、どのようにCa^<2+>過剰のシグナルが伝播して、どのようにネクローシスに至るかの分子機構の解明を行っている。
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