研究概要 |
ラット後頭葉の視神経野に限局性外傷を作成し、経時的にサンプルを採取した。抗connexin(Cx)-36,43抗体を用いた免疫組織化学により、損傷部とその周辺、健常部のneuron、astrocyte、microglia、oligodendroglia自体、及び各細胞間に発現し変化しているCx種の同定を試みた。その結果、外傷後にCx43が活性化し、損傷部に集まったGFAP陽性astrocyte、及びCD11b陽性microgliaに発現していることを見出した。一方、neuronにはCx36が発現しており、外傷後に増えていた。Gap Junction(GJ)及びHemichannel(HC)の活性を評価するために、Ethidium bromideを損傷部に滴下したところ、活性化したastrocyteとmicrogliaのEthidium bromide取込みが増し、Cx43と共存していることが分かった。この結果より、astrocyte,microgliaのCx43構成HCが活性化されていることが示された。 活性化型μ-calpainを認識する抗体を用いた免疫組織化学により、neuronに局在する活性化型μ-calpainが、外傷部から周辺に進展していることを見出した。GJ阻害剤であるcarbenoxolone,Cx43-based HC阻害ペプチドGap26等が、GFAP陽性astrocyte及び活性化型μ-calpain陽性neuronの損傷部から周辺への進展を抑制していた。加えて、神経細胞死の指標であるMAP2免疫染色の低下、及びPropidium Iodide(PI)のneuronへの取込み、μ-calpain活性化に伴うwestern blot上のfodrin分解も、これらの阻害剤で抑制された。 以上のことから、脳外傷が、astrocyte(恐らくmicroglia)の活性化と、GJまたはHC開口を通じて細胞間に有害物質を伝播させ、神経細胞のμ-calpainが活性化される結果、細胞死が誘導されることを見出した。この研究によって、外傷による神経細胞死に、microglia,astrocyte間のCx-based HC,GJを通じた、物質の伝播が寄与していることが明らかになった。
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