研究課題/領域番号 |
22590629
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
秋 利彦 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (60304474)
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研究分担者 |
上村 公一 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (30244586)
船越 丈司 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (40444715)
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キーワード | プロテオミクス / 覚せい剤 / マクロピノサイトース / オートファジー / 細胞障害 / ミトコンドリア / コカイン / アルコール |
研究概要 |
法医学のみならず社会医学領域で広く問題となっている乱用薬毒物等による細胞障害の作用機序の解明及びマーカー分子の確立に向けて、本年は覚せい剤・アルコール・コカイン、及び薬毒物による細胞障害に抗して発現するストレスタンパク質の誘導剤の効果についてプロテオミクスにより検討した。第一にヒト神経芽腫由来細胞に覚せい剤を暴露したところ、分子量約65kDaのタンパク質の顕著な誘導を認めた。質量分析計により解析したところ細胞外のアルブミンの流入であることがわかり、覚せい剤暴露により細胞外液の取り込み経路の一つであるマクロピノサイトーシスが異常に亢進していることが判明した(Nara,et al.Brain Res.)。第二にコカインをラット心筋由来細胞に暴露したところ分子量約230kDaのタンパク質の顕著な誘導を認めた。これはミオシン重鎖であることが判明し、心不全時のミオシン重鎖の発現誘導と類似の現象と考えられた。第三に様々な薬毒物により発現誘導されるストレスタンパク質の一つであるヘムオキシゲナーゼを肝細胞に誘導させたところ、ミトコンドリア局在タンパク質の顕著な低下が認められ、酸化障害を受けたミトコンドリアのオートファジーによる除去が促進されることがわかった。以上の三つのいずれの実験においても、細胞破砕液中の全タンパク質を電気泳動することで薬毒物暴露により顕著な発現変動を示すタンパク質が認められた。そのタンパク質を質量分析計により同定することに成功し、いずれの場合においても主要な細胞障害を反映したものと考えられたことから、プロテオミクスの有用性を実証することができた。
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