【過去の成果】高濃度酸素の持続曝露に伴う酸素中毒の結果としての瀰漫性肺胞傷害(Diffuse alveolar damage : DAD)において、c-Mycを含んだシグナル伝達が変化していた。本年度は、グラム陰性細菌に特有の菌体成分であるリポ多糖(Lipopolysaccharide : LPS)をマウスに腹腔内投与することにより、細菌感染時の高濃度酸素曝露における病態生理の解析を試みた。 【材料と方法】マウス(8週齢、雄、C57BL/6J)を、対照群(5匹)、60%酸素群(5匹、60%酸素状態で4週間飼育)、LPS群(5匹、初日および14日目にそれぞれ0.2mgのLPSを腹膜腔内投与し4週間飼育)、および60%酸素+LPS群(5匹、60%酸素群およびLPS群と同様に飼育)の四群を飼育した。 【結果および考察】4週間飼育後のマウスの体重は、対照群が27.6±0.5g、60%酸素群が22.6±0.4g、LPS群が26.9±0.2g、60%酸素+LPS群が21.1±0.5gであり、LPS投与に比べ、60%高濃度酸素曝露がマウスに高度な侵襲を与えていた。cDNA microarray解析では、c-Myc(NM_010849)および Connective tissue growth factor(Ctgf:NM_010217)の発現は、60%酸素群では誘導されていたが、LPS群では誘導されていなかった。Surfactant-associated protein c(Sftpc:NM_011359)および Lysozyme(Lyzs:NM_017372)の発現は、60%酸素群でもLPS群でも抑制され、肺胞虚脱、生体防禦機構の破綻などを示唆していた。Transforming growth factor β1(Tgfb1:NM_011577)は著変がなく、肺胞中隔の線維化も軽度であった。
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