研究概要 |
酸化ストレスが種々の病態に関与していることが知られており、生体においては血清や尿を試料として比較的簡便に酸化ストレスを評価する方法が確立されつつある。しかし、法医剖検試料における酸化ストレスの評価法は確立されていない。本研究の目的は、オキシステロールや過酸化脂質が法医実務に応用可能な酸化ストレスマーカーとなる可能性を検討することである。(1)オキシステロールの LC-MS/MS による高感度・高精度分析法の確立をめざしたが、剖検試料での定量は感度ならびに回収率、再現性の点で十分な結果が得られなかった。このため、UV-HPLC法で大動脈粥状硬化病変のオキシステロールの定量を行った。その結果、動脈硬化病変では7-ketocholesterol、7-hydroxycholesterol, 27-hydroxycholesterolが増加していた。正常血管壁から7-hydroxycholesterol は検出されなかった。測定感度の向上により、正常血管にも7-hydroxycholesterol が存在する可能性はある。病変部位でオキシステロールが増加していることから、同部への酸化ストレス負荷の可能性が示唆された。(2)昨年度に引き続き粥状硬化病変部の7-ketochokesaterol およびヘキサノイルリジンの免疫染色を行ない、その局在を明らかにすることで、粥状硬化の病態解明を試みた。7-ketochokesaterol およびヘキサノイルリジンは血管内膜に強く発現しており、泡沫細胞の集積部位と概ね一致した。増加しているのは、低比重リポタンパク質中のコレステロール或いは脂質由来の酸化・過酸化物である可能性が示唆された。
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