研究課題
本年度は粘着フィルムを使用した川本法による凍結切片を作成し、この切片がin situ Hybridizationへ応用が可能かどうかの基礎的検討を主に行った。また、同時に法医病理で汎用される免疫染色や特殊染色への応用も試みた。検体には極硬組織(殻)と軟組織(身)を併せ持つしじみ貝を殻ごと凍結した組織やラットマウスの骨盤組織を用いた。これは、突然死の要因となる動脈や心臓弁の骨化について、法医病理の遺伝子学的診断への応用をめざしたものである。結果として、(1)研究計画に記載していたRNA保存試薬に浸漬した組織から川本法を使用して凍結切片を作成するという試みは、RNA保存試薬に浸漬した組織は、粘着フィルムを用いても凍結切片作製はできないことがわかった。RNA保存試薬に浸漬した組織は組織の凍結自体がうまくいかず硬度不足でクリオスタット内で薄く切ることができなかった。しかしながら、(2)川本法を使用すると、通常は不可能とされていたしじみ貝や骨盤組織などの凍結連続切片が容易に作成できた。新鮮試料の凍結からHE標本までに要する時間が30分以内と短く、その凍結切片からRNA抽出を試みたところ高純度高濃度のtotal RNAを得ることができ、RNAの保存状況が良好であると分かった。従ってin situ RT-PCR Hybridizationのプロトコルには、あえてRNA保存試薬に組織を浸漬をする必要がなく、通常の凍結切片を川本法により迅速作成することで十分に対応できると判断した。また、(3)in situ Hybridizationに用いられる染色試薬とプロトコールの温度設定なども、川本法の粘着フィルムに適応可能であるとわかった。(4)川本法による凍結切片を用いた免疫染色は良好であったが、脂肪および弾性繊維染色は不適であるとわかった。
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Leg Med
巻: 13 ページ: 134-141