研究課題
凍結切片をRNA保存試薬RNAlater Ice(-20℃)に浸漬後、RNA抽出を試みた。その結果の1例として、ラット肝臓組織5ミリ角30μm厚の凍結切片4枚から得られたtotal RNAの濃度は47.8ng/μ1と高く、その純度は、260/280で2.09と良好であった。しかし、同じラット肝臓を4%PFA,4℃で1日固定した組織からRNA抽出を試みたが、組織重量24mgから得られたmRNAは1.14ng/μ1および純度260/280で1.19であった。したがって、凍結切片と比較すると、想像以上に4%PFA固定後のmRNAの保存状況は悪いと判断され、4%PFA固定後組織パラフィン包埋切片から、insitu Hybridyzationで標的遺伝子発現検出することの難しさを再認識した。本研究の主目的は、固定や検査時の温度状況に左右されることなく、恒常的に標的遺伝子発現mRNAをin situで組織切片上で確認するための技術を開発するということである。本研究に利用する"川本法"'では、試料凍結から凍結切片作製後、そのHE標本を顕微鏡観察できるまでの所要時間は30分以内であった。従ってHE標本で病巣確認後、そのまま凍結切片から病巣部のRNA検出のための作業が可能であり、このことから、やはり凍結切片作製が極めて容易な"川本法"は遺伝子発現研究への応用に適していると思われた。また、川本法のフィルムに凍結切片を貼付し、2×SSCで95℃温浴処理40分を試みたが切片が剥落しなかったので、プローブをハイブリダイズ後、高温での洗浄操作にも耐えうる事がわかった。また、in situ Hybridyzationに使用する発色液および染色液は川本法粘着フィルムに適合し、残渣などがフィルムに残ることなどはなかった。しかし、設計作成したジゴキシゲニン標識Dnase1プローブ(長さ40bp)とPCR増幅用プローブを使用して、in situ Hybridyzationおよびin situ RT-PCR法により、specificと思われる発現をいまだ得ることはできていないので、今後も手技検討を続けていく。
3: やや遅れている
1.)本年度の研究に使用予定であった、実験対象ヒト大動脈手術摘出検体RNA保存試薬浸漬組織からは、凍結切片作製は難しいことが判明したため。2.)そこで、ラット等実験動物から新鮮な石灰化大動脈を得ることを検討したが、石灰化大動脈を持つラット等の入手が難しく、実験ができなかったため。3.)そこで、標的遺伝子と検索対象サンプルを石灰化組織に発現する遺伝子とすることをやめ、研究分担者竹下治男の研究対象である標的遺伝子Dnase1としたが、遺伝子発現確認のための免疫染色用抗体を選定するのに、長く時間を費やしたため(数種、メーカーに発注をかけるが、生産中止であった)。
ヒト大動脈RNA保存試薬浸漬組織を研究対象とすることは中止し、申請時に記載した平成24年度の計画通り本年度は、これまでに試みた技術をヒトがん症例検体パラフィン切片に応用することで、手技検討を進めていく。がん症例パラフィン切片からレーザーマイクロダイセクションとTaqman RT-PCR法でthymidylate synthase(TS)ほか細胞周期関連遺伝子mRNA発現データおよび同一症例組織の酵素活性測定データがすでにあるので、そのデータとin situ RT-PCR Hybridizationの相関関係を検討する。また、川本法による新鮮凍結切片を利用して、安定的にターゲットmRNAを検出できる、従来法によるin situ Hybridization技術の確立をめざす。
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Leg Med (Tokyo)
巻: 14(1) ページ: 47-50
PMID:22177907
Shimane Journal of Medidal Science
巻: 28(1) ページ: 1-6