【研究の意義】 心筋線維形成・ギャップ結合機能異常を介し興奮伝播の不均一性および再分極過程の遅延を引き起こし、不整脈の発生・維持と関与することが考えられる。アルコール関連死における心筋線維形成・ギャップ結合機能障害および交感神経活性化との関連について不明である。これらの不明点を明らかにし、これまでの研究成果を発展させる。 【研究の内容】 (1)アルコール含有液体飼料を使用し、対照群、慢性アルコール持続投与群、慢性アルコール持続投与+断酒1日および慢性アルコール持続投与+Carvedilol前投与+断酒1日群のラット実験モデルを作成した;(2)左心室組織を用いて、銀染色とアザン染色を行い、心筋線維組織形成を評価した。(3)同じ組織を用いて、疫組織染色および共焦点レーザー顕微鏡・RT-PCRを行い、組織細胞生物学および遺伝子レベルにおける心筋線維形成(マーカー:α-SMA)・心筋ギャップ結合機能(マーカー:Cx43)を定量評価した。 【研究の結果】 慢性アルコール投与により心筋細胞周囲に細網線維組織の増加が見られたが、交感神経遮断薬であるCarvedilol前投与により正常レベルへ回復できた;慢性アルコール投与は、α-SMA陽性細胞の増加・Cx43陽性細胞の減少が引き起こされたが、急性離脱で増悪し、Carvedilol前投与により改善された;(3)同じ傾向はRT-PCRを用いて遺伝子レベルで再確認できた。 【研究の重要性】 (1)慢性アルコール投与および急性離脱は、心筋での線維化リスクの上昇および心筋ギャップ結合機能の低下が引き起こされ、不整脈のリスクが高まる可能性が示唆された。(2)α-SMA陽性細胞の増加・Cx43陽性細胞の減少がCarvedilol前投与による是正され、心筋線維芽細胞の形成・正常なギャップ結合機能の維持には交感神経活性化と関連することが示唆された。
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