アコール依存症ラットモデルを用いて、蛋白質と遺伝子レベルにおいて頻脈性不整脈の発症要因である心筋ギャップ結合リモデリングを検討した。ギャップ結合は、隣接する細胞を直接連結して細胞間のイオン、シグナル伝達物質、分子交換を行い興奮伝播や電気的結合を調節する。頻脈性不整脈の発生・維持には、心筋細胞の機能的・器質的リモデリングが関与し、それらには心筋細胞間結合構成蛋白、ギャップ結合の変化が想定されている。今年度は、左心室心筋ギャップ結合のリモデリングに焦点をあて、以下の点について検討した。1)ギャップ結合蛋白質であるCx43の質的・量的変化と頻脈性不整脈の発生・維持との関連、2)ギャップ結合リモデリングと交感神経活性化との関連、3)ギャップ結合リモデリングを制御するupstream治療として、交感神経活性化遮断薬carvedilolを位置づける可能性の有無である。 その結果、慢性アルコール持続投与ラットの左心室心筋細胞においてcytosolic total Cx43蛋白質発現量およびtotal Cx43のmRNA発現量の低下、膜貫通蛋白質のtotal Cx43及びセリン368とセリン279/282リン酸化Cx43が低下傾向を示したが、統計学的に有意な差はみられなかった。しかし、急性離脱の際にこれらの指標が著明に低下した。アルコール持続投与および急性離脱ラットでは膜貫通蛋白質の非リン酸化Cx43増加がみられた。これらのCx43の変化はcarvedilol前投与によって是正された。 以上の結果により、左心室心筋ギャップ結合リモデリングは細胞間の興奮伝播の異常を生じさせ、頻脈性不整脈の発生・維持に関与する重要な要因と考えられた。また、ギャップ結合リモデリングへの直接的な交感神経系の関与が証明され、交感神経系の制御は頻脈性不整脈のupstream治療となる可能性が示された。
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