研究概要 |
中枢神経系のコリン作動性神経系(ChNS)は学習や記憶に基本的に重要な役割を果たしている。エタノール(EtOH)およびアセトアル デヒド(AcH)による行動学的な影響、c-fos、神経成長因子(NGF)や脳由来神経栄養因子(BDNF)を含むニューロトロフィンがChNS の活性維持への影響について、アルデヒドロゲナーゼ(Aldh)2ノックアウト(KO)、アポリポ ロテイン(Apo)E -KO、野生型(WT) の各マウスを用いて検討した。Eight-arm radial maze と Morris water maze による行動学的実験では、1)EtOH2.0g/kg 投与は Aldh2-KO、ApoE-KO、WT の各マウ スで著しい認知機能を低下させ 0.5g/kg、1.0g/kg 投与は各遺伝子型間で影響が異り、2)2.0g/kg 投与は全遺伝子型で長期記憶を低下 させ、3)学習能力は Aldh2-KO マウスが高く、次いで WT、ApoE-KO マウスの順に く、遺伝子型により差がある。2.EtOH 投与後 30 分のマウス海馬の各種 mRNA 発現を Real-time PCR 法で検討した。1)c-fos はEtOH(1.0、2.0g/kg)投与 Aldh2-KO マウ ス、EtOH(2.0g/kg)投与 WT マウスで強い発現があり、高濃度の EtOH や AcH は発現を促進する。 2)(1)EtOH2.0g/kg 投与では、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)発現は Aldh2 -KO マウスで抑制し、アセチルコリンエス テラーゼの発現はWT マウスで促進し,(2)EtOH による NGF や BDNF 発現への影響はない、 (3)Aldh2-KO は WT マウスに比較して ChAT 発現 は著明に低く、NGF の発現はかなり高い。高濃度の EtOH や AcH は、マウス海馬の ChNS の諸因子を変動させるが、NGF や BDNF の発現変動を 伴わない。
|