研究課題/領域番号 |
22590639
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
平岩 幸一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60124616)
|
研究分担者 |
加藤 菜穂 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (20457766)
|
キーワード | 法医病理学 / クラッシュ症候群 |
研究概要 |
緊縛性ショックはクラッシュ症候群のモデルと考えられている。マウス両大腿を緊縛し、虚血とその後の再還流による諸臓器への影響を遺伝子とタンパク発現変化の観点から検討したところ、その影響が腎および肝で早期から現れることが示唆された。何らかのタンパク合成系が働いて緊縛性ショックが進展しているならば、タンパク合成阻害はショックの進行を阻止できる可能性がある。そこでタンパク合成酵素阻害薬であるアニソマイシンがクラッシュ症候群の治療薬の候補となるか否かを検討した。さらに、アニソマイシン投与後の諸臓器について遺伝子とタンパク発現変化を検討した。 1.C57BL/6J雄マウス20匹をペントバルビタール腹腔内麻酔後に両大腿を3時間緊縛、その後再還流し、緊縛解除後の生存時間を測定した。緊縛解除10分前に生理食塩水で溶解させたアニソマイシン(150mg/kg、10μl/g)を腹腔内投与し、同量の生食を投与した19匹と生存時間を比較した。アニソマイシン投与群は生食投与群と比較し有意に緊縛解除後の生存時間が短縮し、アニソマイシンは治療薬として不適切であることが証明された。 2.C57BL/6Jマウス10匹を1と同様に麻酔後、同量のアニソマイシンを腹腔内投与し、緊縛解除3時間後に摘出したヒラメ筋・肝・腎・肺を試料としてリアルタイムPCRを用いて遺伝子発現変化を検証した。薬剤投与なしの群と比較した結果、Bcl-2がヒラメ筋と肺で有意に上昇し、肝で有意に低下、腎で低下傾向であった。よって筋と肺では抗アポトーシス作用、肝と腎ではアポトーシス作用が示唆された。また、腎では抗細胞死作用や抗炎症作用をもつHspa1bが上昇していたことから抗アポトーシス作用も共存しているものと思われた。 3.2で採取した臓器の一部をパラホルムアルデヒド固定パラフィン包埋組織切片とした。抗Hspa1b、Ptgs2、c-Fos、Bcl-2抗体を用いたDAB法による免疫染色については解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス諸臓器の免疫染色について、オートクレーブ法や温浴法など最適な抗原賦活法を模索しているため、タンパク発現変化の検討が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
クラッシュ症候群の治療薬になりうる薬剤を検索するため、アニソマイシンとは逆にMAPキナーゼのJNK経路の阻害剤であるSP600125投与による生存率の変化を検討したい。さらに、他にもステロイド等の投与も検討したい。また、緊縛解除後の再還流時間を変えたモデルでも遺伝子発現変化を測定し、経時的変化を調査する方針である。
|