研究概要 |
本年度は,恥骨結合部の加齢による変化の定量的表現の試みとして,その3次元像につき主成分分析を行い,検出された形状成分と,Suchey-Brooks分類において着目されている特徴形態との関係などについて検討した。 法医解剖の際鑑定資料として採取・保存された恥骨標本(男性90例,女性52例)をレーザスキャナーで撮影して3次元恥骨結合面像を作成し,Suchey-Brooks法(SB法)により相(phase)分類を行った上で,男女各1例の3次元像からポリゴン数を2,000程度に削減してテンプレート像をそれぞれ作成し,それをもとにさらに各恥骨結合面像について同一点,同一位相からなる相同モデルを作成した。専用ソフトウエア(Human Body Statistics-Principal Component Analysis,産業技術総合研究所)によりphaseごとに成分分析を行い,検出された形状とSB法の特徴形態とを比較した。その結果,phase 1に分類された男女各5例をもとに作成された相同モデルを実際の3次元像に重ね合わせたところ,面間距離は概ね±0.3mm以内であり,ほぼ良好な相同モデルが形成された。また相同モデルから作成された平均像では,phase 1に特徴的とされる上・下端が未形成な点や,平行隆線の観察が可能であったできた。主成分分析では輪郭や上端の膨隆状態などに関係すると考えられる4成分が検出され,平行隆線は複数の成分に混在している可能性が考えられた。今後は,テンプレート像の改善や,他のphase群についての分析を通じ,各phaseの特徴像の作成や年齢層ごとの成分について検討すべきと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
恥骨結合面については,多くのCT画像の3次元再構成像,およびレーザースキャナによる恥骨標本3次元像を取得でき,画像処理による関心領域の描出や,成分分析が進められている。一方で,寛骨耳状面の描出法についてはさらに検討が必要である。
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