研究概要 |
恥骨結合面の平均曲率の検討では若年層の骨標本不足を補い,3次元恥骨像を作成し資料を追加した。その結果10歳代~30歳代にかけて平均曲率(絶対値)が低下する傾向が特に女性の右恥骨で顕著に認められた。また,凹領域・凸領域の比は,Suchey-Brooks分類(SB分類)ないし年齢と正相関する傾向が認められ,phase判定および年齢推定の指標たりうると考えられた。 また昨年度に引き続き骨標本の恥骨結合面の相同モデルを作成し,主成分分析を行い年齢関連成分の検出を試みた。SB分類の各phaseに特徴的な形状成分がみられたが,男女全例(男性90 例,女性52例)での検討では主成分値のばらつきが大きく,また階級ごとの試料数に差があることもあって,phaseまたは年齢階層と強い相関のある成分はみられなかった。そこでこれらの条件を調整して抽出した各年齢層の標本(男性26例,女性24例)から作成した相同モデルを対象として検討を行ったところ,実年齢と関連する成分が男女各1成分ずつ検出され,特に男性の35歳以下の事例については,比較的強い相関(n=11, R^2=0.69)を有する成分が認められた。さらに隣接するphase間で値が著明に変化する成分も検出され,これらの主成分値に反映された形態的特徴の分析が年齢推定指標の数値化に寄与する可能性が考えられた。 10~80歳代の226例(男性124例,女性102例)の骨盤部CTデータ(ピッチ1mm)より構築した骨盤3次元像を対象とした検討では,恥骨結合面についてはSB分類によるphase 判定が可能な例も見られたが,平均曲率の解析に適した十分な数の像を得られなかった。一方,仙骨を除去して寛骨耳状面の描出を試みたが,関節部の癒着や解像性の影響により,耳状面の微細な表面構造を観察することはできず,撮像条件や再構築ソフトウエアについてさらに検討が必要であった。
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