本研究は、DNAチップを用いた体液・感染症の迅速診断法の開発を目的とするものである。本研究内容では,ヒト特異的遺伝子およびABO式血液型遺伝子を判定するDNAチップに、HBV、HCVの2種類の感染症を判定するプローブを追加し、各感染症の陽性の体液検体を用いて、感染症ゲノムを増幅させ、作成したDNAチップと反応させることによって、血液型の鑑別とともに2種類の感染症が正確に判定できるかどうかを検討し、ウイルスの有無の判定が可能であった事を確認した。この課程でABO式血液型遺伝子判定のDNAの長さをウイルスゲノムの増幅断片の長さに合わせ、相互がバランスよくプローブに反応できるように反応条件を調整し,この結果ABO式血液型遺伝子判定の感度が向上したため、これをJ.Forensic Sci.に報告した。また、体液が斑痕の状態になった場合、および体液が液体のまま死後相当時間経過した場合であっても、体液の識別や感染症の判定が正確に検出できるかどうかを、C型肝炎ウイルス陽性の乾燥血液および血痕ならびに実際のC型肝炎ウイルスに感染した遺体からウイルスを検出することにより検討した。その結果、死後60日経過したものであっても感染性が高度に疑われる事を確認した。これらの成果をJ.Clin. Microbiol.に報告した。さらに、各種体液に特異的な新たな指標となるmRNAを見つけるため、精液と膣液を用いて、total RNAを抽出し、cDNAのゲノムプロファイリングを試みた。これにより、精液と膣液特異的なspiddosが認められたため、特異的mRNAの存在が疑われた。これをLeg. Med.およびJap J Forensic Sci & Tech.に報告した。
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