研究課題/領域番号 |
22590642
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
前田 均 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20135049)
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研究分担者 |
石川 隆紀 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (50381984)
道上 知美 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (00529240)
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キーワード | 法医学 / 外傷性ショック / 全身性炎症反応症候群 / 病態生化学 / 分子生物学 |
研究概要 |
法医解剖の診断精度向上を目的として、外傷性ショックおよび全身性炎症反応症候群(SIRS)に関する剖検所見と臨床病像との間の相互評価の基盤となりうる剖検診断基準を作成するため、法医剖検例の広範囲生化学・分子生物学・免疫組織化学検査を行い、外傷後の低酸素・虚血性臓器組織障害と炎症反応の指標を多角的に分析した。その結果、外傷性ショックの急性期・亜急性期の病態および遷延化後の全身性炎症反応症候群や敗血症あるいは終末期の多臓器障害の剖検診断における系統的生化学検査の有用性が再確認された。そのうち、血清蛋白質、肝・腎機能の指標、炎症マーカや主要臓器組織特異マーカの検査結果に臨床像との共通点がみられた。また、外傷性侵襲後の主要臓器組織における低酸素・虚血性変化や心・循環・呼吸・中枢神経系機能障害の動的変化の分子生物学分析法を確立するため、生化学検査に加えて心・肺・脳組織内の関連因子の変動や遺伝子発現を免疫組織化学方法とRT-PCR法による遺伝子発現分析を行った結果、心筋内の心房性・脳性ナトリウム利尿ペプチド(ANP・BNP)、肺組織のサーファクタント関連蛋白質、サイトカインと水分バランス調整因子および脳のグリア構成蛋白や修復因子と神経細胞のアポトーシス関連因子などが死因に特徴的な変動を示した.すなわち、損傷死では急速な失血によるANP・BNPの発現減弱、肺のサイトカインmRNA発現と遷延死における水分バランス調整因子の変動あるいは脳損傷に伴なうグリア構成蛋白や修復因子と神経細胞のアポトーシス、窒息死では低酸素性心筋障害によるANP・BNPの発現減弱、肺サーファクタントmRNAの発現減弱と水分バランス調整因子の変動あるいは中枢神経障害に伴なうグリア構成蛋白・修復因子と神経細胞めアポトーシス、中毒死では心筋内ANP・BNPの覚せい剤乱用時の発現促進と向精神薬類による発現減弱や覚せい剤乱用時の肺サーファクタントmRNAの発現減弱などがみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画にしたがって、1)剖検例の分析すなわち精密病理組織検査、免疫組織化学検査、生化学検査および分子生物学検査並びに剖検データ・諸検査結果の総合的・包括的分析と評価を行い、2)外傷性ショックおよび全身性炎症反応症候群の暫定的剖検診断基準の策定にとりかかることができた。また、3)出血性ショックモデルを用いた動物実験によって分子生物学的病態分析法の有効性を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にしたがって、今後も引き続いて剖検例の分析を行うとともに、外傷性ショックおよび全身性炎症反応症候群の暫定的剖検診断基準を作成、剖検例に適用して再評価と修正を行い、剖検所見と臨床病像との間の相互評価の基盤となりうる剖検診断基準の確立をめざす。そのため、特に剖検例の分析に重点をおく。現在のところ、研究計画の変更や研究遂行上の問題点はない。
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