比較的若年者で突然死亡したものの解剖によっては死因を明らかとすることのできなかった症例について、遺伝性不整脈の原因遺伝子の変異解析をおこなった。今年度は、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍に係るリアノジン受容体遺伝子を中心に遺伝子変異の解析をおこなったが、解析症例中にアミノ酸の変異を伴うような変異は発見されなかった。しかしながら、こうした実際の解剖症例を用いた遺伝子変異解析検討は、死因の明らかにすることができなかった症例の死因検索に情報を提供するだけでなく、仮に変異が発見された場合には、適切な倫理的な配慮を講じた後に遺伝子解析することにより、遺族における変異保因者の発見とその突然死予防にも道をひらくものであり、社会的な意義が大きいと考える。来年度も死因不詳の解剖症例があれば、変異検索を行っていく予定である。本研究では、これと同時に、すでに遺伝性不整脈に関する変異が発見されていた当該変異を導入した遺伝子改変動物の作成をおこない、その表現系を解析することも目指している。解剖では主に形態学的な変化を元にして診断が行われるが、当該不整脈の遺伝子変異が実際にどういった臓器の形態学的な変化を伴うのかについて検討して、実際の解剖に役立てたいと考えている。当初の予定では、遺伝子改変動物(F1)まで作成する予定であったが、キメラからヘテロ動物の作成が予定と比べて作成に期間を要したために、今年度中はキメラマウスからヘテロの変異体の作成を行い、現在ホモ動物の作成を継続行っている最中である。したがって、遺伝子改変動物を用いた実験系における解析は今年度は施行できていない。来年度以降に検討する予定である。
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