| 研究概要 |
覚せい剤の心筋への中毒作用を中心に,ストレスの影響をNormal群(N群),ストレス群(S群),覚せい剤投与(MAP)群(M群),MAP+ストレス群(MS群)で比較検討した。マウスの慣れを防ぐため,ストレスは以下の方法で1ヶ月間処置した:月曜;温度変化,6h(4℃→室温,各1h),火曜;電気ショック(4mA,5sその後25s休みを計60回)+温度変化,4h,水曜;拘束+温度変化,6h,木曜;温度変化,6h,金曜;水浸拘束,3h。MAPは3回/週(月,水,金)10mg/kgを腹腔内投与した。その結果,ストレスの指標である血中コルチコステロンは,M群では変化がみられず,S群で有意に促進し,MS群ではその促進が抑えられた。一方,心筋の組織的変化では,とくにMS群で過収縮像と強い凝固壊死像の部位が多く観察された。また下垂体ではS群でpyknosis様変化,M群で空胞変性,MS群で強い空胞変性や細胞脱落などが観察され,ストレスの影響が認められた。なお,肝・腎では特に大きな著変は観察されなかった。約50遺伝子について検討した心筋RNAの発現変化では,Hsp70が水浸拘束3hでの結果と同様にM群でのみ有意に(p<0.01)上昇した。一方,MT1,MT2はストレス負荷で促進がみられ,MS群では有意に(p<0.05,p<0.01)高値を示した。NOS2はM群で変化はなく,ストレス負荷群(S,MS群)で有意に(p<0.01)低下した。IL-6,アンギオテンシン変換酵素がMS群で有意に(p<0.01)上昇した。また心臓の負荷に関係するBNPはM群で有意に(p<0.05)促進した。以上,ストレスと覚せい剤の1ヶ月における生体への影響では,遺伝子発現からは障害と防御に関して観察されたが,心筋,下垂体の組織像では,ストレス下での覚醒剤使用により障害が強まることが示唆された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単回での急性中毒と異なり,1ヶ月での障害では生体における状態が複雑となっている為,血中データなどの障害程度を示す数値化がやや困難になる点があった。また下垂体の標本についてはその切片作製が難しく予備的検討が必要となった為,やや進展が遅れている。また,現在タンパクの組織免疫染色についても既に結果は得られているが,かなり予期しない顕著な変化のため,再現性を求めて検討をもう少し続行中である。
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