研究概要 |
平成22年度からの高脂肪高炭水化物食負荷と通常食間の分子生物学的プロファイルの差の検討については、高齢の高血圧自然発症ラット(SHR)とWKYラットを対照とし、高脂肪食高炭水化物負荷が運動直後の骨格筋に与える影響についての実験を終了している。その結果、骨格筋重量(特に速筋)の低下、骨格筋組織への炎症細胞浸潤、インスリン抵抗性は、WKY、SHR、高脂肪高炭水化物食負荷SHR(SHR-HF)の順で認められた。筋タンパク分解経路活性化のマーカーであるユビキチンリガーゼ(MuRF1, Atrogin1)遺伝子の発現は、SHR-HFで低下を認め、さらに筋サテライト細胞マーカーPax7の発現はSHR-HFで低下を認めた。これまで、24ヶ月齢程度ではじめてみられるような筋の量的・質的変化が、比較的高齢なSHR―HFでも認められたことは、このモデルがサルコペニアモデルとしての妥当性を有することを示唆するものである。 筋萎縮モデル(ギプス法、後肢懸垂システム)はいずれも再現性や適合性に欠けることが判明したため、以後これらについては検討を行わず、生理的な筋萎縮を再現する方針に転換している(引き続き、本年度から承認を頂いた基盤研究Cで、研究を行う)。 これらの結果は、論文や各種学会で発表した。 一方、炎症性サイトカインのうち、TNFα、IL1βについては、SHR-HFで増加を認めたが、IL-6と筋由来の抗炎症サイトカインであるIL-15の発現はSHR-HFで低下した。IL-6、IL-15については運動(水泳負荷)前後で発現が増加するが、SHRではその増加率が減少していることを見出した。
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