本研究の目的は、鍼刺激による骨格筋幹細胞の増殖効果を医療へ利用する治療法の開発である。今年度は、骨格筋の幹細胞を効果的に増殖させる鍼通電刺激条件を明らかにし、その条件での廃用性筋萎縮マウスモデルへの鍼通電刺激による前臨床段階の研究を実施し、治療効果を解明可能な解析系を確立する。 骨格筋幹細胞を最も効果的に増殖させる条件をリアルタイムPCR解析法によるミオスタチン遺伝子発現の変化を指標に、正常マウス腓腹筋・ヒラメ筋で解析し、低周波では10Hzから30Hzの間が効果的であることを見出した。更に、中周波の混合波でも有効性を確認した。また、フェムト秒レーザー照射も、同様に有効であった。また血清中のクレアチンキナーゼ測定の結果から、単刺では骨格筋の微細な損傷を生じるが、フェムト秒レーザー照射では損傷を生じず、鍼通電の場合も殆ど損傷を生じないことが示唆された。また、骨格筋から顕微鏡下で筋線維を分離しその両端を固定し、張力と収縮力を測定する解析系も確立した。次に、筋萎縮を生じさせた廃用性筋萎縮マウスモデルに対して、反復鍼通電刺激群と無刺激群の2群間比較で、筋萎縮抑制効果を遺伝子発現解析、筋線維径と相対筋量を指標として解析した。現在、鍼通電刺激開始前、2週後、4週後に、ヒラメ筋のミオスタチン等のタンパク合成系遺伝子やタンパク分解系のユビキチンリガーゼ遺伝子の発現量、筋線維径、相対筋量を解析中である。筋線維径と相対筋量の解析から、鍼通電刺激で筋萎縮抑制が可能な事を見出した。
|