研究課題/領域番号 |
22590653
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高岡 裕 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20332281)
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研究分担者 |
一瀬 晃洋 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (90362780)
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キーワード | 東洋医学 / 鍼灸 / 遺伝子発現解析 |
研究概要 |
本研究の目的は、鍼刺激による骨格筋幹細胞の増殖効果を医療へ利用する治療法の開発である。今年度は、昨年度決定した骨格筋幹細胞を最も効果的に増殖させる鍼通電刺激条件(周波数)での鍼通電刺激による骨格筋萎縮抑制効果と筋の収縮力の関係を、モデルマウスを用いた動物実験により解析した。そして、リアルタイムPCRによる評価系に加えて、ウエスタンブロッティングによる評価系を確立した。まず、骨格筋萎縮マウスモデル作出条件である後肢懸垂したマウスを用いて、(1)前年度に既報の隔日反復の刺激条件で4週間刺激を実施した"後肢懸垂/鍼通電刺激"群、(2)後肢懸垂のみで鍼通電刺激しなかった"後肢懸垂/無刺激"群、(3)後肢懸垂と鍼通電刺激の両方を行わなかった"野生型/無刺激"群の3群で実験し、鍼通電刺激が廃用性骨格筋萎縮を抑制した際の骨格筋の収縮力について解析した。その結果、廃用性骨格筋萎縮条件下で鍼通電刺激は筋量の維持に有効なことが改めて示された。そして下腿三頭筋の収縮力を解析した結果、"後肢懸垂/鍼通電刺激"群と"野生型/無刺激"の収縮力は同等であった。このことは鍼通電刺激された骨格筋は筋量が維持されただけでなく、骨格筋の機能である収縮力も維持されたことを示唆している。次に、ミオスタチンタンパク質の発現量を決定可能な、ウエスタンブロッティングによる評価系(内在性コントロール:alpha-Tubulin>を確立した。現在、フェムト秒レーザー鍼の効果の評価と骨格筋幹細胞の増殖に最も有効な条件検討の実験に取り組んでいる。 なお、日本温泉気候物理医学会雑誌74巻2号に掲載された原著論文(昨年度研究成果として報告済)が、第17回日本温泉気候物理医学会優秀論文賞に内定しており、2012年6月に受賞講演を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の達成については、骨格筋幹細胞の増殖に最も有効な刺激周波数の探索以外は、全て達成した。刺激周波数の探索が少し遅れている理由は、昨年の東日本大震災により筑波大学に構築した動物実験系が崩壊したこと、mRNAに加えてタンパク量の解析も必要でありウェスタンブロッティングによる評価系を確立したこと、である。
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今後の研究の推進方策 |
現在実施中の、骨格筋幹細胞の増殖に最も有効な刺激周波数の探索の解析を早期に終え、鍼治療の有効性についての臨床研究に取り組む予定である。現在、実験解析と並行して本学の医学倫理委員会への審査申請書類を準備中である。具体的には臨床研究申請書作成に加えて、本学では医学倫理委員会へ申請する臨床研究の実施に先立ちICRweb(http://icrweb.jp/icr/)によるE-learning(臨床研究入門初級編・15コマ)受講が必須であり、修了証を初回申請時等に提出する必要があるので、現在その受講中である。
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