研究課題/領域番号 |
22590654
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
櫻井 孝 独立行政法人国立長寿医療研究センター, もの忘れ外来, 部長 (50335444)
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研究分担者 |
徳田 治彦 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 臨床検査部, 部長 (10397325)
細井 孝之 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 臨床研究推進部, 部長 (40240709)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高齢者糖尿病 / 認知症 / チアゾリジン / インクレチン |
研究概要 |
糖尿病は認知症の危険因子である。糖尿病に認知症の合併が多い機序として、脳血管障害、高インスリン血症、高血糖、低血糖、血糖変動、脂質異常の関与が考えられている。特に高齢者において低血糖の意義は大きい。しかし軽度の低血糖を繰り返すことが、脳機能にどのような影響を及ぼすかは不明である。糖尿病治療薬の中でも、インクレチン関連薬は低血糖リスクが低く、また血糖変動も狭まる為、認知症を合併した例では、第一選択薬となりえる。本研究の目的は、高齢者糖尿病においてインクレチン関連薬を中心とした治療を行う事で、高齢者の脳機能が保持され、認知症が抑制されることを検証することである。 本試験は高齢の2型糖尿病患者を対象とした、インクレチン関連薬による、脳機能への影響を比較する前向き観察試験である。軽度認知機能障害を有する70歳-85歳の高齢者の2型糖尿病(HbA1c 6.4~8.4%)を登録し、以下の情報を収集する。① BMI、腹囲、網膜症、②教育年数、要介護状態、薬剤、③一般生化学、高感度CRP、アポ蛋白Eサブタイプ、高分子アディポネクチン、④ 頭部MRI、脳血流シンチ、⑤ 心理検査、⑥うつ、ADL、睡眠、過食、低血糖の頻度である。 本研究では、2型糖尿病患者に認知症を合併した例の管理方法についても検討する。認知症を合併した糖尿病の治療はたいへん難渋する。アルツハイマー型認知症があると、どうして糖尿病管理が困難となるかについて、その要因を明らかにする。更に高齢者糖尿病での低血糖の及ぼす影響についても検証する。つまり認知症のない高齢者糖尿病30名とアルツハイマー型認知症(AD)を合併した糖尿病30名を上記患者集団から抽出し、血糖日内変動の差(4時-7時-9時-12時-14時-18時-20時)を検討する。血糖の測定にはSMBGを用いる。低血糖を回避した穏やかな血糖管理の脳機能との関連を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に主任研究者の所属変更があったため、対象となる候補患者を診療し、蓄積することから開始しています。このため本研究の対象の登録は遅れていました。しかし対象の確保は確実に進行しており、今後とも継続して進めていきたく考えております。 対象を蓄積していく過程で、本研究の前段階として検討すべき課題について解析を進めています。平成24年度は、2型糖尿病患者に認知症を合併した時の管理方法について解析を行い、結果をえることができました。つまりアルツハイマー型認知症で糖尿病と合併した105名、268名の非糖尿病において、様々な臨床指標を比較し、血糖高値、認知症の周辺症状(過食と睡眠障害)、うつが治療困難となる要因であることが示されました(本年度糖尿病学会で発表)。糖尿病と摂食、睡眠、うつとの関連は示唆されてきましたが、認知症における意義が示されました。この結果は、本研究の解析精度を高めるため、これらの因子を評価する必要性を示したものと考えられました。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の対象登録と前向き観察試験は確実に進めていきたく考えています。平成25年度は、さらに高齢者糖尿病での低血糖の及ぼす影響についての研究を進める予定です。つまり認知症のない高齢者糖尿病30名とアルツハイマー型認知症(AD)を合併した糖尿病30名を抽出し、血糖日内変動の差(4時-7時-9時-12時-14時-18時-20時)を検討します。低血糖を回避した穏やかな血糖管理と脳機能との関連を明らかにすることを目的にしています。対象者の確保はすでにできています。研究プロトコールの倫理上の承認が得られ次第、データ収集を始めたいと考えています。高齢者糖尿病の低血糖に関する実態に光を当て、脳を守るための糖尿病管理目標値について、エビデンスを積み上げたいと思います。本年度もご助成を賜れますようお願い申し上げます。
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