研究概要 |
脳梗塞発症後のADL低下促進因子・阻害因子を明らかにするため,急性期に入院を必要とした脳梗塞と一過性脳虚血発作を対象とし,大学病院を事務局として各地域の基幹3病院(鳥取県立中央病院,山陰労災病院,松江赤十字病院)とhospital-basedで登録式追跡調査を継続した. 調査開始にあたり,個人情報保護と連結した追跡調査が可能であることを念頭においた登録システムとして,各病院で患者登録(コンピューター入力)をした後,個人情報をはずした内容のみを事務局で統合するシステム(プログラム)を作成し,運用中である. 2011年度には,大学病院および基幹3病院から589例(男性342例,女性247例;平均年齢75.2歳)の登録症例があった.MNDSのStroke Stroke Data Bankの診断基準に則った治療開始時の脳梗塞臨床病型の各頻度は,心原性脳塞栓症30.3%,アテローマ血栓性脳梗塞(artery to artery塞栓症を含む)47.3%,ラクナ梗塞12.4%,一過性脳虚血発作(画像で異常所見なし)4.5%,その他1.0%,分類不能4.0%などであった.われわれが1999年~2003年に同地域で集計した1,310例による既報告(Suto Y, et al.Eur Neurol 2009;62:304-310)と比べると,若干の背景は異なるが平均年齢がより高く,心原性脳塞栓症に比してアテローマ血栓性脳梗塞の頻度が多いことが目立った.新規登録と並行して,登録症例の危険因子の管理・治療状況など臨床像の詳細な解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
4病院で新規の登録を継続するとともに,登録した症例は1年ごとにADLを中心とした追跡調査を行い,集計して統計学的解析を行うとともに,さらにバイオマーカーによる予測因子の検討を進め,健康管理対策や社会資源の利用法に関する考察を行っていく.
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