研究概要 |
脳梗塞発症後のADL低下促進因子・阻害因子を明らかにするため,急性期に入院を必要とした脳梗塞と一過性脳虚血発作を対象とし,大学病院を事務局として各地域の基幹3病院(鳥取県立中央病院,山陰労災病院,松江赤十字病院)とhospital-basedで登録式追跡調査を継続した. 各病院で患者登録(コンピューター入力)をした後,個人情報をはずした内容のみを事務局で統合するシステム(プログラム)を作成し,運用中である. 2013年度末には,大学病院および基幹3病院から2,480例(男性1,463例,女性1,017例;平均年齢74.4歳)の登録症例があった.NINDSのStroke Stroke Data Bankの診断基準に則った治療開始時の脳梗塞臨床病型の各頻度は,心原性脳塞栓症 28.6%,アテローマ血栓性脳梗塞(artery to artery塞栓症を含む) 28.9%,ラクナ梗塞 13.7%,一過性脳虚血発作 4.8%,その他 2.1%,分類不能 21.9%であった.再発例が24.4%を占めた. 脳梗塞発症後来院までの経過時間と急性期病院退院時ADLとの関連性をみると,来院時間が2時間以内群は,心原性脳塞栓症が多く,入院時ADLが有意に不良であったが,改善効果も高い傾向が示された.来院時間が6時間以降群は治療開始前後ともに,有意に症状進行が認められた.入院時ADL良好群(mRS0-2)のうち,症状進行が認められる群は,認められない群に比して退院時ADLが有意に悪化していた.脳梗塞発症後早期に来院することが.退院時ADLを改善する上で重要な要因のひとつである. また,心房細動を有する患者に対して,発症予防を目的としたワルファリンによる抗凝固療法においては,至適範囲内に調整することにより,心原性脳塞栓症発症後の予後に有意に影響を及ぼすことを明らかにした.
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