研究実績の概要 |
脳梗塞発症後のADL低下促進因子・阻害因子を明らかにするため,急性期に入院を必要とした脳梗塞と一過性脳虚血発作を対象とし,大学病院を事務局として各地域の基幹3病院(鳥取県立中央病院,山陰労災病院,松江赤十字病院)とhospital-basedで登録式追跡調査を継続してきた.各病院で患者登録(コンピューター入力)をした後,個人情報をはずした内容のみを事務局で統合するシステム(プログラム)を作成し,運用してきた. 2014年度末には,大学病院および基幹3病院から3,014例(男性1,776例,女性1,238例;平均年齢74.0歳)の登録症例があった.NINDSのStroke Stroke Data Bankの診断基準に則った治療開始時の脳梗塞臨床病型の各頻度は,心原性脳塞栓症 28.1%,アテローマ血栓性脳梗塞(artery to artery塞栓症を含む) 29.1%,ラクナ梗塞 12.9%,一過性脳虚血発作 4.7%,その他 3.1%,分類不能 22.1%であった.再発例が24.1%を占めた. 急性期脳梗塞患者におけるbody mass index(BMI)との関連性を見ると,BMI 18.5未満の低体重症例は,18.5≦BMI<25の標準体重や25≦BMIの肥満の症例と比較して,有意に平均年齢が高く,女性の割合が多かった.低体重症例は,他と比較して入院時ADL,退院時ADL,長期予後(平均観察期間2.6年の生存率)が有意に不良であることが明らかであった.低体重と脳血管障害との病態について,より詳細な解析を開始している. また,機能予後不良となる梗塞巣最大径≧40mmに関連する因子として,心房細動を高頻度に有し,BNPが有意に高く,拡張期血圧と尿酸が有意に低かった.脳梗塞発症後の機能予後改善を考える上で,発症前からの脳卒中関連因子の多角的な管理の重要性が示唆された.
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