研究課題/領域番号 |
22590656
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
杉本 利嗣 島根大学, 医学部, 教授 (00226458)
|
研究分担者 |
山内 美香 島根大学, 医学部, 助教 (40379681)
|
キーワード | 骨粗鬆症 / 骨形成 / 副甲状腺ホルモン / 骨形成因子 / Smad3 / Tmem119 / Wnt / βカテニン |
研究概要 |
私共はDNAマイクロアレイ解析を用いた研究において、副甲状腺ホルモン(PTH)-smad3系の下流に位置する骨芽細胞の分化、石灰化を促進する新規分子としてTmem119をみいだした。そこで次に骨芽細胞においてPTHがsmad3を介してβカテニンを増加させる作用におけるTmem119の関与とその機序について検討した。Dominant negative smad3により内因性smad3を抑制すると、PTHのTmem119増加作用は消失し、一方RNAiにより内因性Tmem119を抑制するとPTHのβカテニン増加作用は消失した。骨芽細胞において、PTHはcAMPを介してTmem119レベルを増加させ、smad3はその上流に、βカテニンはその下流に存在することを示した。そしてTmem119はBMPによって誘導される因子でもあり、また骨形成に重要なRunx2やBMP特異的smadであるsmad1,smad5と相互作用することを明らかにした。さらにTmem119安定過剰発現はβカテニンレベルを増加させるのみならず、βカテニンに阻害的に作用するスクレロスチンのレベルを減少させることを示した。以上の本年度の研究結果より、PTH-smad3-Tmem119系がPTHのWnt-βcatein系の促進に重要であることが立証された。またTmem119は骨形成促進因子として骨粗懸症治療薬の標的としても期待しうる分子である可能性がある。さらに現在Tmem119は筋芽細胞から骨芽細胞への分化を促進するとの結果を得ており、いまだ未知である全身的な筋と骨の相互連間に重要な因子である可能性もあると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在最も注目されている骨形成促進剤であるPTHの骨形成シグナルのメカニズムについて新たな知見を得ており、新たな骨形成促進因子の探索、ならびに今後の骨形成促進剤開発につながる成果を挙げつつあるため。
|
今後の研究の推進方策 |
我々は現在Tmem119以外にも筋細胞から産生、分泌されて、骨芽細胞に作用し、骨形成促進作用を有する候補因子を見いだしており、今後筋と骨の相互連関という新たな視点をふまえて、骨形成シグナルの解明を目指した研究をすすめていきたい。
|