研究課題/領域番号 |
22590660
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
坂梨 まゆ子 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80363662)
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研究分担者 |
松崎 俊博 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50244330)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 漢方薬 / 薬理学 / 東洋医学 / メタボリックシンドローム / 循環器・高血圧 |
研究概要 |
【目的】本年度は、SSTに含まれる生薬の植物性estrogen様作用が、脂質異常症ならびに虚血再灌流(I/R)心機能障害におよぼす影響について検討した。 【方法】両側卵巣摘出(OVX)Wistar系雌性ラットに水またはSSTを1ヶ月間経口投与し、SST投与群は更に2群にわけ、一方はestrogen受容体拮抗薬 fulvestrant(SST+ful)、他方はfulvestrantの溶媒(SST+veh)を週1回皮下投与した。薬物投与終了後、血中脂質の測定および摘出心臓のI/R実験を行い、心機能の変化とI/R終了後の心筋梗塞サイズの検討を行った。 【結果】水投与OVXラットでは、水投与偽手術ラットに比して総コレステロール値の有意な増加を認め、OVXラットが脂質異常症を呈することが確認された。SSTを投与したOVX(OVX/SST+veh)ラットでは、水投与OVXラットに比して有意な総コレステロール値の低下が認められた。SSTとfulvestrantを併用投与した(OVX/SST+ful)ラットでは、OVX/SST+vehラットと同程度の総コレステロール値の低下を認め、このことからSSTの脂質低下作用の主要な機序に、estrogen様作用が関与する可能性は低いことが示唆された。一方、水投与OVXラットでは、水投与偽手術ラットに比して摘出心臓のI/R心機能障害の有意な悪化と、I/R後の梗塞サイズの有意な増加を認めた。しかし、OVX/SST+vehラットでは、悪化したI/R心機能障害の有意な改善と増加した梗塞サイズの有意な縮小を認めた。OVX/SST+fulラットでは、OVX/SST+vehラットに比して、再灌流中の心機能回復の程度が低下し、再灌流後の梗塞サイズが有意に増加したことから、SSTによるI/R心機能障害改善作用の機序に、estrogen様作用が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書では、三黄瀉心湯による高脂血症改善作用の機序、ならびに閉経モデルラットの虚血再灌流障害改善作用の分子機序の解明を目的と記載した。本年度の研究により、三黄瀉心湯に含まれる生薬のエストロゲン様作用が、虚血再灌流障害の改善作用に関与する一方で、脂質低下作用にはほとんど影響をおよぼさないことを新たに明らかにした。現在は、引き続き三黄瀉心湯の有効成分の特定、ならびに分子機序の解明の検討を行っていることから、本研究は、当初の計画に従い概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度までに明らかにした三黄瀉心湯の虚血再灌流障害改善作用と脂質低下作用の分子機序の解明を中心に研究を推進する。そのために、当初の研究計画を一部変更し、三黄瀉心湯のメタボリックシンドローム改善作用の中心的役割を果たす生薬中の薬効成分の特定を目指す。本年度で研究期間が終了することから、これまでに得られた研究の成果を取りまとめて、本年度中に査読付英文雑誌に論文発表することを第一目標とする。
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