研究概要 |
認知症高齢者の治療・介護にあたり特に重要なのは、うつ状態、幻覚、不安、依存、俳徊、攻撃的行動、睡眠障害、異食・過食などの周辺症状である。この評価のための画像診断は周辺症状が強いと身体を長時間特定の空間に固定するPETやSPECT,fMRIなどを受けることが極めて困難である。 また質問・アンケートといった間接的な評価は質問者や評価者によって主観的なバラつきのあることが問題である。機能的近赤外線スペクトロスコピーは、覚醒状態の脳の活動状態を捉えるの適している。これに総合機能評価を同時に行うことで、各周辺症状に特有な脳血流パターンを発見できうると考えられる。 1)対象杏林大学病院もの忘れセンターを受診し、総合機能評価および画像検査にて認知症と診断された患者15例。この中で診察上、総合機能評価上、明らかな周辺症状を表している患者8名と、認知症はあるものの周辺症状が明らかでない患者7名を対象とした。被験者全員に文章によるインフォームド・コンセントを得た。 2)方法:初診時に総合機能評価を行った。(基本的日常生活活動度(Barthel Index),手段的日常生活活動度(Lawton),認知機能(MMSE),うつ(Geriatric Depression Scale)・意欲(Vitality Index)、転倒、失禁、頻尿、歩行障害、嚥下障害など認知機能に関連し高齢者以降増加する21項目の調査、血管障害危険因子(年齢、性、DM,HT,高脂血症、喫煙、既往) を必須共通調査項目とした。近赤外線スペクトロスコピーを用い両側前頭部のHb濃度を測定した。 3)結果:認知症の疾患としてはアルツハイマー型8例、レビー小体型5例、脳血管性3例であった。この内、特にうつ状態をしめる7例では前頭葉の血流低下が著しく、問診などによる負荷にてさらに低下する傾向が認められた。幻覚、不安、依存、睡眠障害、異食・過食を示した症例は各1例ずつであり、本年度は特定のパターンの検出にはいたっていない。
|