【目的】今回我々は新たに障害物の回避行動に際して持続的な脳血流量変化に注目して、認知症疾患別の非中核とされる諸症状(不安・抑うつ・徘徊症・不眠・妄想など)の反応差違を検討することを目的とした。【方法】認知症登録者50名(男性27名 平均年齢 79.3±4.1 歳 女性23名78.0 ±6.3 歳)を対象として、アルツハイマー病21名とレビー小体型認知症10名とMCI(mild cognitive impairment)8名 正常コントロールとして 10名 に対してfNIRSを実施し脳表脳血流量の分布変化の検討を行った。タスクとしては障害物として高さ15cmの直方体(横:50cm 縦25cm)の乗り越え行為と高さ1m直径20cmの円筒形の障害物を用いて幅 30cm、40cm の各空間間隙を歩行ですり抜け行為を事前の行為開始前状態から連続的に前頭部と後頭葉での脳表脳血流量を測定した。【結果】全例50例に対してタスクを実施して 全例支障なく実施可能であった。レビー小体病においては障害物またぎ行為・すり抜け行為共に行為開始前に後頭葉外側部の脳表脳血流量が増加し 右)前頭部での脳血流量が低下している。アルツハイマー病では前頭葉の脳表脳血流量が各タスクにおいても変化なく右)後頭葉での脳表脳血流量はレビー小体病と同様に低下した。MCI(mild cognitive impairment)では全タスクで前頭葉の脳表脳血流量は左右差なく一貫して増加し、各疾患において異なる脳表脳血流量変化を示した。 また、本研究の副次的結果としてfNIRSをもちいた脳表近くの脳血流変化を観察の中で、大脳からのCPG機能低下に関わる現象を利用した高齢者の転倒リスクが評価できた。繰り返し行為で累減的に脳血流量が低下する。この累減現象はcentral pattern generator(以下CPG)機能以外からの説明は困難であった。本研究の結果より脳血流の累減現象の喪失過程が 高齢者の転倒傾向に密接に関わっていることが確認された。
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