研究概要 |
1.血管障害後内膜肥厚に対するLAT1の影響に関する、LAT1欠損マウスを用いた検討:11~14週齢のオスLAT1ヘテロ欠損マウス(n=15)の大腿動脈にワイヤー障害を施すことによって内膜肥厚を誘発し、手術28日後の新生内膜肥厚の状態を対照マウス(n=23)と比較した。昨年度より例数を増やして検討した結果、内膜/中膜比はヘテロ欠損マウス:1,5±0.6、対照マウス:1.8±0.9であり、統計的に有意ではないがLAT1ヘテロ欠損マウスで新生内膜肥厚形成が小さい傾向がみられた。また、大腿動脈にカフ傷害術を行ったところ、ヘテロ欠損マウス、対照マウスの間で新生内膜肥厚の程度に明らかな有意差は認められなかった。引き続き症例数を増やして検討する予定である。 2.ApoE欠損マウスの動脈硬化病変の形成過程でのLAT1の関与:ApoE-/-×LAT1+/-のダブル欠損マウスを作製した。本年度は基礎データとしてこのマウスの生理指標(体重、血圧、脈拍)を20,24,28,32週齢時に測定し、対照マウスとの比較を行った。また加齢に伴い形成される大動脈粥状硬化病変について、24、32週齢時での大動脈見開き標本を作製し、oil red O染色ののち定量をおこなった。今後さらに高週齢での大動脈粥状硬化巣の評価を行う予定である。また、今年度は新規LAT1特異的抗体を作製し、同抗体を用いて免疫染色によりLAT1発現の評価を行った。 3.マウス大脳皮質下慢性虚血病変モデルの構築とその評価:マウスの両側頸動脈の周囲に微小コイルを巻き狭小化すると、低還流状態となり大脳白質が障害される。慢性低還流に伴う血液脳関門の傷害を確認するためにエバンスブルー染色によって評価を行った。しかしながら、本モデルでは傷害が強くないためか、血液脳関門に明らかな異常は見られなかった。次年度は脳の毛細血管分画を抽出するなど部位別に評価を行う予定である。
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