1.血管平滑筋細胞に対するLAT1阻害剤の増殖抑制の機序の検討:培養血管平滑筋細胞にLAT1阻害剤BCHを添加すると細胞生存性が低下する。その機序を調べるため細胞周期タンパクの発現をWestern Blottingにて検討したが、本年度はBCH添加によって発現が変動する細胞周期タンパクを同定することができなかった。 2.ApoE欠損マウスの動脈硬化病変の形成過程でのLAT1の関与:ApoE-/-×LAT1+/-のダブル欠損マウスを作製した。本年度は1年齢雄性マウスにおいて加齢に伴い形成される大動脈粥状硬化病変について検討した。大動脈見開き標本を作製し、oil red O染色ののち定量を行った。大動脈面積に占める粥状動脈硬化病変が占める面積の割合は、対照であるApoE-/-×LAT1+/+マウス:60.5±7.4%に対し、ApoE-/-×LAT1+/-ダブル欠損マウス:45.2±9.7%と、ダブル欠損マウスにおいて有意に低値であった。 3.血管障害後内膜肥厚に対するLAT1の影響に関する、LAT1欠損マウスを用いた検討:昨年度は11~14週齢の雄性LAT1欠損マウスを用いて大腿動脈にワイヤー障害後の新生内膜肥厚を比較したが、本年度は同条件で大腿動脈にカフ傷害術を行った。新生内膜肥厚病変における内膜/中膜比はLAT1+/-マウス(n=18)、対照マウス(n=8)の間で有意差は認められなかった。 4.マウス大脳皮質下慢性虚血病変モデルの構築とその評価:マウスの両側頸動脈の周囲に微小コイルを巻き狭小化すると、脳低還流状態となり大脳白質が障害される。本年度は慢性低還流に伴う脳の傷害を確認するため、脳ホモジネートを用いてELISAにて炎症マーカーの評価を行った。雄性C57BL/6マウスへのコイル装着術7日後には脳における各種炎症マーカーの発現が非障害脳にくらべ上昇していた。
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