研究概要 |
【目的】血清尿酸値との関連が報告されている遺伝子多型を用いて、日本人の痛風発症における遺伝子間相互作用について検討する。【方法】排泄低下型高尿酸血症を呈する男性痛風患者153例を痛風群とし、健常男性532例をコントロール群とした。遺伝要因としてPDZK1(rs12129861),GCKR(rs780094),ABCG2(rs2231142),LRRC16A(rs742132),LRP2(rs2544390),SLC17A1(rs1165196),SLC2A9(rs1014290),SLC16A9(rs2242206)、SLC22A11(rs17300741)、の9遺伝子多型を選択した。遺伝子間相互作用の有無を検討するために使用したロジスティック回帰モデルを下記に示す。Model1/2間の比較をx二乗検定で行い、相互作用があると考えられる遺伝子多型の組み合わせを探索した。 Model1:(相互作用がないと仮定したモデル)g(P)=SNP1 risk allele(+)+SNP2 risk allele(+) Model2:(相互作用があると仮定したモデル)g(P)=SNP1 risk allele(+)+SNP2 risk allele(+)+{SNP1 risk allele(+)x SNP2 risk allele(+)}【結果】9遺伝子多型単独で痛風発症に有意な関連があったGCKR・ABCG・SLC17A1・SLC2A9において、各々の遺伝子の間に相互作用は認められなかった。モデルの比較でP<0.1を相互作用がある可能性と考え、SLC16A9/ABCG2(P=0.018)、SLC16A9/LRP2(P=0.063)、SLC16A9/GCKR(P=0.086)が抽出された。SLC16A9/ABCG2遺伝子間で相互作用ありとした場合ORは1.17であり相互作用がない場合のOR1.81より低下していたが大きな違いはなかった。一方、SLC16A/LRP2、SLC16A/GCKR遺伝子間では相互作用ありとした場合、ORはそれぞれ2.5倍、3.5倍に上昇した。 【考察】5LC16A9にコードされるMCT9は尿細管上皮細胞血管側におけるカルニチン排泄トランスポーターであること、血中カルニチン濃度と血清尿酸値が相関することが報告されている。カルニチンは細胞質内の遊離脂肪酸と結合し、ミトコンドリア内に脂肪酸を運搬する作用を有するが、LRP2やGCKRといった脂質プロファイルに影響を及ぼす分子と遺伝子間相互作用が認められたことについては興味深い。今後症例を増やし、痛風発症に関する遺伝要因の相互作用について、さらに検討していく必要がある。
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