本研究では食道疾患、特に食道の炎症においてマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の発現やその役割について解明することを目的としているが、そのために、まず動物実験モデルを用いた検証を試みた。まず、食道炎について好酸球性食道炎などの難治性食道炎についてMIFの関与を検討するためマウス好酸球食道炎モデルとしてアスペルギルス抗原を長期的に投与し発症させるモデルを作成した。抗原未投与マウスと比べアスペルギルス抗原投与マウスの食道組織を採取しLUNA(ルナ)染色にて好酸球の所在や数量について解析した。ルナ染色では未治療マウスの消化管においては食道やでは殆ど見られなかったが、大腸ではその陽性細胞が食道粘膜より多くみられた.またマウス食道組織についてMIF免疫染色を行ったところ、MIF染色陽性細胞は免疫細胞系が主体であり、好酸球だけではなくリンパ球などの様々な免疫細胞に認められた。アスペルギルス抗原投与による食道粘膜内のMIF染色陽性細胞数は増加していたが、それらは好酸球主体でなく様々な免疫細胞に発現が見られた。この食道炎モデルについて野生型マウスとMIFノックアウトマウスを用いて比較検討したところ、好酸球浸潤数を含め免疫細胞系の数量はMIFノックアウトマウスで少ない傾向を示した。 さらに我々が開発したMIFDNAワクチン投与による食道炎の変化について解析した。組織学的にはコントロール群、ワクチン治療群とも上皮を含めた組織破壊を伴う食道炎は起きず、食道粘膜内の免疫細胞の浸潤がワクチン治療群で少なくなる傾向を示した。これらの結果を元に、現在食道組織におけるIL-13などのサイトカイン量について解析を進めており、MIFDNAワクチンによる好酸球食道炎の治療効果にさらに客観的なデータを上乗せできるよう試みており論文化などの成果発表の準備を進めている。
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