研究課題/領域番号 |
22590679
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡部 宏嗣 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50384764)
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研究分担者 |
平田 喜裕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10529192)
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キーワード | 胃癌 / マウスモデル / 細胞内シグナル |
研究概要 |
胃粘膜特異的な遺伝子変異を可能とするために、TFF1プロモーター下にCreリコンビナーゼを発現するTFF1-Creトランスジェニックマウスを二系統(TFFICre-L1,TFFICre-L2)作成し、レポーターマウスであるRosa26レポーターマウスと交配した。12週以降の週齢の個体も含め胃粘膜のβ-galactosidase活性を認めなかった。そのため、胃粘膜を含む消化管で誘導性に遺伝子変異を起こすマウス(K19-Cre ERT トランスジェニックマウス)での検討を開始した。 K19-Cre ERTトランスジェニックマウスとRosa26-EYFPレポーターマウスを交配し、タモキシフェンの投与による遺伝子誘導を検討した。タモキシフェン4mg腹腔内投与3日間、4mg経口投与3日間と0.75mg腹腔内投与7日間で1週間後の胃粘膜におけるEYFP発現を免疫染色法で調べたところ、いずれの方法でも遺伝子変異によるEYFP発現を認めた(いずれも20%程度の胃上皮細胞において)。この遺伝子変異モデルを用いてタモキシフェン誘導性胃粘膜特異的なKras変異、TGFbII型受容体ノックアウトマウスを作成している。現在TGFbII型受容体のヘテロ接合マウスを得て、タモキシフェン投与を行った。投与後12週の胃粘膜は著明に肥厚し、化生性変化がみられた。今後Kras変異、TGFbII型受容体のホモノックアウトマウスを作成し、タモキシフェン投与による胃粘膜の腫瘍性変化について検討を進める。 また化学発癌モデルで明らかにした胃癌関連遺伝子であるASK1が、マウスの炎症発癌に与える影響を検討するために、野生型マウスとASK1ノックアウトマウスにヘリコバクターピロリを感染させている。今後、胃粘膜の変化を検討し、胃炎および胃の化生性変化、アポトーシスの違いなどを検討し、炎症発癌におけるASK1の役割についても解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TFF1-Creマウスの系統樹立はできていないが、K19-CreERTマウスの代用によって胃粘膜での遺伝子変異法が確立できた。さらに目的であるKras変異、TGFbII型受容体ノックアウトマウスの樹立が順調にすすんでおり、ヘテロ接合マウスでの胃粘膜の化生性変化も確認できているため。
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今後の研究の推進方策 |
上記マウスのタモキシフェン投与による経時的な胃粘膜の変化および発癌について病理学的検討を行い、免疫染色とmRNA発現解析によって、粘膜変化に関与する遺伝子発現変化を明らかにする。またASK1の機能解析のために、ASK1胃粘膜特異的ノックアウトを作成するために、野生型マウスの骨髄移植を行い、胃炎発癌への役割を病理学的に検討する。 またこれらの研究で発癌に関与する細胞内シグナルに関して、阻害剤を用いることで、発癌や増殖の抑制効果がみられるか検討する。
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