研究課題
functional dyspepsia(FD)は、心窩部痛、腹部膨満感などの上腹部症状があるにもかかわらず、その原因となりうる器質的所見、あるいは生化学的異常所見が認められず、症状が慢性的に繰り返し出現する状態をいう。十二指腸の酸環境と上腹部症状の発現には明らかな関連があることが明らかとなってきているが、FD例と健常者において十二指腸の酸環境に違いがあるのかについて、私共が独自に考案した無線式pHモニタリングシステムを用いた十二指腸pH測定法を用いて、上腹部症状の出現と十二指腸酸環境との関連、不安、抑うつ状態時に上昇する血中の各種サイトカインの変動と上腹部症状出現との関連を明らかとする研究を平成22年度より行っている。平成23年度には、胃内への酸注入時の症状が、FD例において、健常者よりも強いことが明らかとなり、共同研究者が海外雑誌に掲載した。本研究課題であるFD例における十二指腸pH測定について症例を追加しての検討を継続して行っている。また、健診受診例を対象として、FD例に類似した疾患として非びらん性胃食道逆流症における血中インターロイキン(IL)-2、IL-6、IL-8、IL-10を行ったが、正常者と比較して有意な差がみられておらず、症状出現時の血中サイトカインの変動についての検討が必要と考えている。さらに、FDのみならず、胃食道逆流症を含めた上腹部症状を有する上部消化器疾患の病態解明のための研究、胃瘻から中止した半固形化栄養剤時の胃食道逆流についても研究なども行っており、その成果を英文雑誌を中心に発表している。
3: やや遅れている
FD例における十二指腸pH測定について当初の予定より、症例の追加検討が少ないが、平成23年度には無線式pHモニタリングシステムの改変が行われ、一時的に本検討を行えない時期があったことも影響している。本検討は本学医の倫理委員会にて承認が得られており、さらに継続して症例を追加して検討を行う予定である。
外来通院中のFD患者だけでなく、健診受診例や一般健常ボランティアにおいて、FD症状を有する例における検討を進めていく予定である。また、血中サイトカインについては、上腹部症状がみられている時期とない時期との比較検討も行いたいと考えている。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (4件)
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