本研究では食道下端部の運動機能にフォーカスをあて、食道の運動能と胃内容物の食道内への逆流の様子を(1)食道収縮圧、(2)超音波装置で計測した食道全周筋層厚、(3)pHセンサーで計測した食道内酸度を同時に、かつ360度全周性に連続計測し食道下端部の運動と胃酸の食道内逆流の関係を明らかとすることを目的としている。本年度は、360度全周性に食道内圧とpHを同時に測定できるカテーテルの開発と、得られたデータを解析するためのソフトウエアの開発を重点に行った。カテーテルの開発は、先端から10cm中枢側に、全周性8チャンネルのpHセンサーに加えて全周性8チャンネルの内圧測定用トランスジューサーを有する機器(カテーテル)を開発することができた。本カテーテルを3名のボランティアに経鼻的に挿入し、下部食道に留置して、安定して食道全周の内圧とpHが測定できること、さらにカテーテルは直径5mmと太い径を有しているが、軟らかいシリコンカテーテルを使用しているため、挿入時、留置時ともにボランティアへの受容性は高いものであることが明らかとなった。また全例、予定した4時間の測定を途中中断なくおこなうことができた。さらに1名のボランティアにおいては、測定中に試験食を摂取させ、食前と食後の食道運動、胃酸の食道内逆流について検討したが、食前、中、後の連続測定も可能であった。得られたデータを解析するためのソフトウエアの開発を行い、pHデータに関しては自動解析可能となっている。但し、内圧とpHデータの解析が別個に行われるため、現在、時間軸を一致させて同時解析が可能となるように改良を行っている。
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