研究課題
基盤研究(C)
内視鏡下に食道癌症例の癌部・周辺非腫瘍粘膜から生検サンプルを用いてマイクロアレイで同定した12種のヒトマイクロRNA(食道扁平上皮癌部で2倍以上の発現変化)を定量的に分析してみると、miR-1246、miR-1290、miR-196a、miR-196b、miR-1914、miR-424、miR-130b、miR-7、miR-455-3pが2倍以上発現上昇した。miR-203が2分の1以下に発現低下した。食道扁平上皮癌組織のmiR発現と臨床病理学的因子の関連性を明らかにするために、多段階に食道癌が発癌する過程においてmiRが果たす役割を解析する。しかしながら、異形成~上皮内癌~早期癌のサンプルが十分でなく、内視鏡下粘膜下層剥離術を用いて切除標本、施行時の血液サンプルを集積して、臨床病理database を構築した。化学放射線療法前後における非腫瘍部食道粘膜のmiRの変動を、6症例において統計的に解析した結果で有意差がなかったが、2倍以上増加したmiR-1914については放射線応答性miRである可能性があり、症例を追加し治療前後でその発現変動を追求する。食道扁平上皮癌における特性をさらに検討するため、アカラシア患者の食道粘膜における発現変化を検討した。対照群と比べて、アカラシアの食道粘膜では12種類のmiRで有意差がみられた。7つが有意に上昇、5つが有意に低下したmiRであった。注目すべき点は、食道癌をはじめとする多くの癌腫で発現上昇が報告されているmiR-21がアカラシア食道粘膜で上昇している点である。miR-21の標的分子として報告されているPDCD4、 SPRY1やCCDC12のmRNAが低下している。しかし、一方でmiR-1246、miR-196a、miR-196b、miR-1914、miR-424、miR-130b、miR-7、miR-455-3p、miR-203 はいずれもアカラシア食道粘膜では変動しておらず、食道扁平上皮癌の発癌過程における特性が示唆された。miR-1290は食道扁平上皮癌において血清miRが上昇している。miR-1290をターゲットに、食道扁平上皮癌特異的miRの特定を確かなものにしたい。
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Digestion
巻: 82(3) ページ: 138-44