研究概要 |
上部消化管内視鏡生検組織を用いた検討では、内視鏡的生検組織を用いて、慢性胃炎(化生性胃炎、萎縮性胃炎、鳥肌胃炎)、胃潰瘍、胃ポリープ、MALTリンパ腫胃組織の採取し、PCR法による検討を行った結果、MALTリンパ腫では7/18,その他の上部消化管疾患では合わせて5/250のH.heilmannii(Hh)陽性率を認めた。また、細菌学的、分子生物学的検討として、16S rRNAおよびureaseのsequenceを検討しGENETYX-MAC:UPGMAによりcluster解析を施行した結果、H.heilmanniiおよびH.suisに分類される菌であることが明らかとなった。病理組織学、免疫学的検討からは、生検組織を用いた検討でPCR法陽性者に対応した陽性所見を認めた。さらに鳥肌胃炎症例2例が陽性であることから、胃癌との関連性が示唆された。また、H.pyloriに対するPCRとの両者の陽性率がMALTリンパ腫症例できわめて高率であることが明らかとなった。 感染モデルによる検討では、カニクイザルより分離、マウスに継代し、Hhとして同定、登録している菌および鳥肌胃炎症例の胃組織を含んだ胃粘液を採取し、胃ゾンデによりC57BL/6マウスに感染させ、1,2,3,6,12ヶ月後の胃組織を採取し、病理組織化学的検討、PCR,in situ hybridization法による検討を行った。その結果、感染6ヶ月以降のマウスでは全例に胃底腺粘膜内に隆起性病変を認めた。また壁細胞内への浸潤およびapoptosisの所見が観察された。組織化学的には、VEGF-A、Flt-1,Flk-1,COX-2,iNOSが腫瘍内および周辺部で強陽性所見を示したことから、虚血を引き金とする発現増殖が関与することが示唆された。さらに受容体抗体投与が極めて有効であることが明らかとなった。
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