研究概要 |
上部消化管内視鏡生検組織を用いた検討では、内視鏡的生検組織を用いて、慢性胃炎(化生性胃炎、萎縮性胃炎、鳥肌胃炎)、胃潰瘍、胃ポリープ、MALTリンパ腫、および本年度はじめて胃癌胃組織を50例から採取し、PCR法による検討を行った結果、MALTリンパ腫では/820, その他の上部消化管疾患では合わせて5/250のH. heilmannii (Hh)陽性率を認めたが、本年度の検討では胃癌症例はすべて陰性だった。病理組織学、免疫学的検討からは、生検組織を用いた検討でPCR法陽性者に対応してin situ hybridization法により陽性所見を認めた。H.pylori、H.heilmaniiに対するPCRにより両者の陽性率がMALTリンパ腫症例できわめて高率であることが明らかとなった。 感染モデルによる検討では、カニクイザルより分離した菌を含んだ胃粘液を採取し、胃ゾンデによりC57BL/6マウスに感染させ、1, 2, 3, 6, 12ヶ月後の胃組織を採取し、病理組織化学的検討、PCR, in situ hybridization法による検討を行った。その組織におけるc-MET, hepatocyte growth factor (HGF) , HGF activator (HGFA)との関係について検討した。さらにc-MET抗体を腹腔内投与し、腫瘍の変化を検討した。その結果、胃MALTリンパ腫に比較し、肝、肺リンパ腫においては、MadCAM-1陽性high endothelial venuleの形成が亢進していることが明らかとなった。また、肝、肺病変では、c-MET活性が著明に亢進していることが示された。さらに抗体投与により腫瘍の有意の縮小が観察された。以上より、Hhによる胃MALTリンパ腫が、肝、肺に進展する際には、微小循環系が増生し、c-METが関連することが示唆された。
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