研究概要 |
本研究では,内視鏡的に切除した胃腺腫,早期胃癌とその背景粘膜におけるタイト結合蛋白の発現を蛍光免疫組織染色で確認し,その発現程度を定量化した.胃正常粘膜上皮,腸上皮化生粘膜上皮あるいは胃癌細胞にはクローディン(CLDN)1,CLDN3,CLDN4,CLDN18の発現を認め,それぞれの発現は,劇的に変化することが明らかとなった.胃正常粘膜上皮においては,CLDN18の発現を認め,腸上皮化生粘膜上皮では,CLDN18の発現は有意に低下し,CLDN3やCLDN4の発現を有意に認めることが明らかとなった.これらの発現は癌化によって誘導されるというよりは,癌化以前の段階で誘導されていると考えられた.またCLDN4とCLDN18の発現は,オクルーディンやZO-1の発現するタイト結合部位以外に各細胞側方部分にも発現がみられ,今後タイト結合部位の発現と側方部の発現がどのような関係にあるかを明らかにする必要がある.CLDN7の発現は,正常粘膜,腸上皮化生粘膜,胃癌細胞で明らかな変化を認めなかった.胃腺腫では,CLDN3,CLDN4の発現が有意に増加していた. 胃粘膜上皮細胞の増殖マーカーとしてKi67の発現とそれぞれのクローディンの発現を検討すると,癌細胞におけるCLDN18の発現は,Ki67の発現と逆相関していた. 今後は,粘膜下層へ浸潤した癌,あるいはその癌の先深部におけるこれらタイト結合蛋白の発現と増殖能について検討していく予定としている.また特異的クローディン発現細胞株を樹立し,その特異的発現による増殖能への影響を検討中である.
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