研究概要 |
タイト結合蛋白は,細胞間の透過性を制御するバリア機能や細胞の極性を維持するフェンス機能を有しており,生体の恒常性の維持に重要な役割を担っている.クローディン(CLDN)はタイト結合蛋白の1つとして重要な役割をしている.CLDNは少なくとも27のサブタイプからなり,これらサブタイプは,臓器,細胞種特異的に発現し,さらに正常上皮と癌では発現が異なることが示唆されている.本研究では,内視鏡的に切除した早期胃癌とその背景粘膜におけるタイト結合蛋白の発現を定量化した. 正常胃粘膜,腸上皮化生粘膜あるいは胃癌細胞にはCLDN1, CLDN3, CLDN4, CLDN7,CLDN18が発現し,それぞれの発現は,劇的に変化することが明らかとなった.CLDN3, CLDN4, CLDN7のタイト結合における発現は腸上皮化生のない胃粘膜と比べて腸上皮化生粘膜と早期胃癌で有意に高いことが明らかとなり,増殖マーカーであるKi67発現(Ki67-LI)はCLDN3と有意に逆相関し,CLDN4,CLDN7とは相関を認めなかった.さらにCLDN18の胃上皮細胞における発現は,腸上皮化生のない胃粘膜と比べて腸上皮化生粘膜と早期胃癌で有意に低いことが明らかとなり,さらに早期胃癌でのCLDN18の発現は,腸上皮化生のない胃粘膜と比べて有意に低いことが明らかとなった.胃癌の粘膜下層浸潤先進部では,CLDN18の発現がKi67-LIと有意に逆相関し,粘膜下層浸潤先進部におけるCLDN18の発現低下が,癌の浸潤や転移にかかわっている可能性が考えられた.このことを証明するためにCLDN18を発現する胃癌細胞株にCLDN18 siRNAを処理し,CLDN18発現を低下させると,癌細胞増殖と浸潤能が有意に増加することが明らかとなり,CLDN18の発現低下が,胃癌の浸潤や転移にかかわっていることが初めて明らかとなった
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