前癌病変と考えられる特殊腸上皮化生(SIM群)とSIMのない円柱上皮化生(CLE群)に発現する種々の分子異常を解析し、PPI治療に対する分子異常の変化について検討した。その結果、両群におけるmicrosatelliteinstability(MSI)および4遺伝子(hMLH1、p16、E-cadherin、APC)のpromoter領域のメチル化異常の頻度に差を認めなかった。また、SIMと特異的に反応するDas-1抗体の反応性はCLE群に比べてSIM群で有意に高かった。PPI投与群ではMSIとp16、E-cadherin、APC遺伝子のメチル化異常は消失したが、PPI非投与群ではその傾向はなかった。すなわち、CLEにもSIMと同等の分子異常が存在することから、SIMのみならずCLEも前癌病変と考えられた。さらに、これらの分子異常の頻度は米国から報告とほぼ同等であったことから日本人と米国人のBEの性質は類似しており、分子マーカーの変化からPPI投与はBEの進展を抑制する可能性があると考えられた。
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