研究課題/領域番号 |
22590694
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
荒木 昭博 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (80361690)
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研究分担者 |
土屋 輝一郎 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (40376786)
岡田 英理子 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (20376784)
渡辺 守 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10175127)
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キーワード | ダブルバルーン内視鏡 / DBE / 小腸生検 / Hath1 / Atoh1 / マッピング生検 / 小腸培養 / 杯細胞 |
研究概要 |
これまで未知の領域であるヒト小腸に関して、バルーン内視鏡はライブでの生理的な環境下における観察だけでなく、生検による上皮細胞、間質、腸内細菌を含めた小腸環境を反映した検体の採取が可能となった。そこで本研究では、これまで申請者らが解析を行ってきた腸管上皮細胞の分化再生機構をさらに発展させ、ヒト小腸全長における腸管上皮細胞の組成制御、機能制御を解析することで、小腸全体としての機能評価を確立することを目的とし、最終的には各小腸疾患における病態を抽出し治療の標的を集約させることである。またその補助としてヒト小腸組織の培養のおけるex vivoの小腸上皮機能、幹細胞機能評価を確立し消化管機能スクリーニング法を開発する。 本年度はクローン病患者と健常者との比較を行った。クローン病患者の空腸では内視鏡的に正常粘膜であり、生検組織による病理学的検討においても健常人と比較しても大きな変化を認めなかった。また小腸上皮のバネート細胞や杯細胞などの構成細胞や絨毛の大きさも変化を認めなかった。しかし興味深いことに生検検体のRNAから遺伝子発現を定量的PCRを用いて解析したところ、分化遺伝子であるHath1や分化形質遺伝子であるMUC2や抗菌物質であるディフェンシンなどの発現がクローン病患者において著しく低下していた。これはクローン病患者の空腸では内視鏡的、組織学的には病変部位ではないにも関わらず遺伝子発現変化を認めておりクローン病における消化管バリアー能の低下を示唆していた。 さらに網羅的にクローン病と正常検体との比較検討を行うため空腸生検検体を用いてマイクロアレイ解析を現在施行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全小腸をマッピング生検する計画において検体の収集が問題となることが予想されたが、東京医科歯科大学にて患者の同意のもと順調に収集が行われた。さらに、検体からのDNA,RNAの同時精製も成功し、それぞれ腸内細菌叢解析、上皮細胞遺伝子発現解析が可能であり、マイクロアレイ、次世代シークエンサーを用いた各疾患における比較検討が勧められている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
収集された検体をマイクロアレイ、次世代シークエンスを用い網羅的に疾患特異性腸内細菌叢、上皮細胞発現遺伝子の同定を勧めていく。すでにクローン病においてある遺伝子に関する上皮細胞での発現差異を同定しており、今後はその遺伝子の疾患に対する機能制御を解析していく予定である。
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