研究課題
本研究は申請者らが独自に研究を展開してきた腫瘍壊死因子(TNF)受容体シグナルを介した腸管上皮細胞における免疫学的シグナル伝達に注目し、炎症性腸疾患における特異的発癌分子機構とその新規治療標的としての可能性について着目している。その結果、本研究では当該研究期間に以下のような成果が得られた。1)リコンビナント(r)インターフェロン-ガンマ(rIFN-g)やrTNF-aの存在下でマウス腸上皮細胞株MODE-KおよびCT-26細胞を培養したときに誘導される2型TNF受容体(TNFR2)特異的な発現上昇は、細胞内のp65やIk-Baのリン酸化を誘導することのほか、これらの細胞ではカスパーゼ8やカスパーゼ3の活性化が誘導されないことがWestern blot法で確認された。2)またマウス慢性大腸炎モデルを作製したとき、in vitroでの結果と同様に大腸上皮においてp65やIk-Baのリン酸化が誘導されることがWestern blot法で観察された。これを受けて現在、in vivoにおける炎症性発癌に対するTNFシグナルの影響を解析中である。これらの研究結果は腸管上皮細胞における特異的なTNFシグナルがNF-kBの活性化に深く関与する事実と、それによる腸管上皮細胞の発癌を誘導し得る可能性を暗示するものと思われる。さらにこの分子メカニズムが炎症性腸疾患における特異的発癌の病態機序においてその治療標的になりうることが示唆され、今後の研究成果が期待されるものと思われる。
2: おおむね順調に進展している
炎症性発癌モデルにおけるその調節機構に関しては、当初に想定されていた標的分子のほか、アポトーシス関連分子の影響を受けているか否か、その解析を同時に進めており、本研究は予定されていた計画から若干異なる展開を辿りつつあり、大きな成果が得られる可能性を秘めている。
レンチウイルスベクターを用いたP2Aレベルの動物実験に関しては、学内においてその環境整備を調整している段階である。これが完了すれば計画中の実験を遂行する予定である。
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