研究概要 |
【目的】われわれはこれまで、大腸発癌の初期病変ではK-ras変異によりGlutathione S-transferase (GST)-πが誘導されることを報告した。本研究では、GST-πノックアウト(KO)マウス由来大腸細胞に変異K-ras遺伝子を導入し、細胞増殖やアポトーシスの変化を調べることにより、大腸発癌におけるGST-πの役割を明らかにする。また、siRNAを用いてK-ras変異陽性大腸癌細胞のGST-πをノックダウン(KD)し、細胞増殖に及ぼす効果や機序、K-ras下流に存在するMAP kinaseとの関係を明らかにする。 【方法と結果】(1)GST-πノックアウト(KO)マウス由来大腸細胞に変異K-RAS遺伝子を導入し、G418耐性細胞GSTKO/RAS1-3を樹立した。GSTKO/RAS1及びGSTKO/RAS2を培養してMTT assayを行ったところ、いずれもGSTKO/neoに比べ細胞増殖が高まっていた。(2)GST-πsiRNAを用いてK-ras変異陽性大腸癌細胞株M7609のGST-π発現をノックダウシ(KD)し、細胞増殖活性をMTT assayにより調べたところ、GST-πKD(M7609GSTsiRNA)細胞では親株に比べて有意に低下していた。(3)M7609GSTsiRNAにおけるP-RAF,p-MEK,P-ERKの発現をWestern blot法により調べたところ、いずれも有意に発現が低下していた。(4)M7609のcytosolに抗p-RAF抗体を添加して免疫沈降を行い、抗GST-π抗体でWestern blotを行い、GST-πとp-RAFの結合を確認した。 【考察】大腸発癌においては、GST-πがp-RAFと直接結合することにようp-RAFを安定化し、さらにMEK,ERKを活性化して細胞増殖を促進することにより、発癌を促進することが明らかとなった。
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