研究課題/領域番号 |
22590704
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
谷田 諭史 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 助教 (30528782)
|
研究分担者 |
城 卓志 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (30231369)
片岡 洋望 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (40381785)
|
キーワード | IL-8 / HB-EGF-CTF / PLZF / colitic cancer / 潰瘍性大腸炎 |
研究概要 |
【目的】炎症性腸疾患において、腸管の持続する活動性炎症より大腸癌(colitic cancer)を合併する。しかしそのメカニズムは不明である。潰瘍性大腸炎では、炎症細胞や腸管上皮から放出される炎症性サイトカイン(IL-8)がcolitic cancerの増殖・進展に重要な役割を果たしている。HB-EGF C末端細胞内ドメイン(HB-EGF-CTF)核移行が細胞増殖に重要な役割を果たす。HB-EGF-CTF核移行を阻害することが新たな癌治療戦略になり得ると考え新規薬剤の探索を行い、その候補薬剤の細胞増殖抑制効果を調べた。【方法】HB-EGF-CTFとPLZFとの結合を抑制する9000種類のchemical compoundをAlpha Screen systemを用い網羅的にスクリーニングした。大腸癌細胞株(HT29, HCT116)を使用し細胞増殖カーブおよびMTSアッセイにて検討した。HB-EGF-CTFおよびPLZFに対する蛍光免疫染色を行い、細胞内局在の変化を調べた。EGFRリン酸化については、免疫沈降にて確認した。【結果】HB-EGF-CTFとPLZFとの結合を抑制する薬剤として化合物No.8016が得られ、No.8016と類似ビフェニール構造をもつ2種類の化合物(カンデサルタン、テルミサルタン)をみつけだすことができた。IL-8による細胞増殖抑制効果は、カンデサルタンに比べテルミサルタンの方が強かった。IL-8刺激によるHB-EGF-C末端核移行は、テルミサルタンのみで阻害できた。カンデサルタン、テルミサルタン共にEGFRリン酸化を阻害しなかった。【結論】テルミサルタンは、IL-8により誘導されるHB-EGF-CTF核移行を抑制することにより、細胞増殖抑制作用を発揮すると考えられた。HB-EGF-CTF核移行シグナルを抑制するテルミサルタンは、新たな癌治療戦略になりうる薬剤と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
9000種類のchemical compoundをAlpha Screen systemを用い網羅的にスクリーニングした結果、テルミサルタンとNo.8016がHB-EGF-CTFとPLZFとの結合を抑制する薬剤であるとわかった。また、これら薬剤が増殖抑制効果も発揮することが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
さらにこれら薬剤が、in vivo(マウス発癌実験)においても、増殖抑制効果が認められることが示せれば、臨床応用も可能となってくる。アゾキシメタンを投与後慢性DSS腸炎惹起発癌モデルにおいて、これら薬剤を同時投与し、大腸癌増殖進展が抑えられれば、in vivo実験でも示せたことになる。現在、実験準備、進行中。
|