従来の私共の検討より、脂質メディエーターであるスフィンゴシン1リン酸が肝臓の様々な病態において深く関与していることが推定される。とくに22年度はスフィンゴシン1リン酸がex vivoで、受容体S1P2を介してRho kinaseを活性化することにより門脈圧を亢進させることに着目して検討を行った。 胆管結紮により作成した門脈圧亢進症ラットに受容体S1P2アンタゴニストを投与してところ、全身血圧には影響を及ぼさない濃度で門脈圧が低下することが確認された。一方、コントロールラットにおいては同濃度の受容体アンタゴニストは全身血圧、門脈圧を変化させなかった。すなわち、S1P2アンタゴニストは門脈圧亢進症ラットにおいてのみ、門脈圧選択的に圧低下作用を有することが明らかとなった。 以上よりS1P2アンタゴニストが門脈圧亢進症治療に有用であることが示唆される。今後、今回認められた作用の機序の解明を進めていきたい。
|