研究課題/領域番号 |
22590716
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池田 均 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80202422)
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研究分担者 |
富谷 智明 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (90227637)
中川 勇人 東京大学, 医学部附属病院, 医員 (00555609)
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キーワード | スフィンゴシン1リン酸 / 門脈圧亢進症 |
研究概要 |
従来の私共の検討より、脂質メディエーターであるスフィンゴシン1リン酸は、その受容体が肝臓に発現し、受容体欠損マウスにおいて、肝再生の増強や肝線維化の抑制が認められることから、肝臓の様々な病態において深く関与していることが推定される。 23年度は胆管結紮により作成した門脈圧亢進症ラットに受容体SIP2アンタゴニストを投与したところ、全身血圧には影響を及ぼさない濃度で門脈圧が低下することを見出した。一方、コントロールラットにおいては同濃度の受容体アンタゴニストは全身血圧、門脈圧を変化させなかった。すなわち、SIP2アンタゴニストは門脈圧亢進症ラットにおいてのみ、門脈圧選択的に圧低下作用を有することが明らかとなった。組織学的検討から、門脈圧亢進症ラット肝臓の、主として星細胞においてSIP2の発現が亢進していることが明らかとなり、この現象が受容体アンタゴニストの門脈圧選択的作用を説明するものと考えている。また、肝臓におけるRho kinase活性の経時的検討により、門脈圧低下にはRho kinase活性低下作用が関与することも明らかとなった。 以上よりSIP2アンタゴニストが門脈圧亢進症治療に有用であることが示唆される。 今後は、臨床応用を念頭に置いて、SIP2アンタゴニストの投与のタイミング、副作用のチェック、とくにSIP2への特異性の確認を行っていく予定である。さらにRho、Rho kinase系は門脈圧亢進にとどまらず、線維化など広く肝障害に関連することが明らかとなっている。私どものこれまでの結果は、このRho、Rho kinase系の調節に実際にスフィンゴシン1リン酸が作用していることを強く示唆するものであり、この点についても、さらに明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想した効果がin vivoで得られ、さらに機序についても解明できた。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験で得られたデーダを元に臨床応用について検討していきたい。
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