研究概要 |
Albcre/+;Ptenflox/floxマウスとLSL-KrasG12D/+マウスとの交配を行い、Albcre/+;LSL-KrasG12D/+;Ptenflox/floxを作成した。KRAS変異にPTENホモ欠失が加わったマウスは肝腫瘍を形成し、腹水、黄疸により7-8週齢で死亡した。肝腫瘍の病理は腺癌を示し、肝内胆管癌と考えられた。PTENヘテロ欠失では肝細胞癌、肝内胆管癌が混在した。 最近注目されている細胞内シグナル伝達系であるHippo pathwayの構成成分MST1, MST2, SAV1のノックアウトマウスでは肝腫瘍が形成されることが報告された。このとき肝細胞癌と肝内胆管癌のいずれも形成されることが示されている。このpathwayがいずれの肝癌の形成にも重要であり、起源細胞にも関わることが予想された。このため、肝細胞癌および肝内胆管癌を含んだ胆道系腫瘍においてこのpathwayの構成因子の発現状況をwestern blottingで、遺伝子異常をSNPアレイの結果から確認した。肝癌細胞株3種類でSAV1の発現低下を認めた。胆道系腫瘍でもSAV1の発現低下およびKIBRAの発現低下を認めた。遺伝子の欠失が発現低下の原因となっている細胞株もあった。これらのHippo pathwayの構成成分に異常を伴う細胞株では受容体型チロシンキナーゼAXLが活性化しているものが多かった。 SAV1の発現が低下している細胞株において活性化していると考えられるYAP1とTAZのノックダウンを行い、発現遺伝子の変化を解析した。いずれのノックダウンでも既報通りCTGF遺伝子の発現低下を認めた。TAZのノックダウンでは、E-カドヘリン、N-カドヘリンの発現上昇がみられ、SAV1異常によるTAZの活性化による細胞接着の低下が起こることを示唆していた。
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