肝臓は肝実質細胞(肝細胞)とそれ以外の非実質細胞によって構成される。本研究では、これまでに確立したマーカー分子による肝臓細胞の分離・同定技術を用いることで、特に肝星細胞と類洞内皮細胞の発生や疾患時における細胞間相互作用を解明することを目指した。また、IL-6ファミリーサイトカインであるオンコスタチンM(OSM)の肝線維化作用についても検討した。まず、成体肝臓から調製した肝星細胞のin vitro培養を行ない、OSMを添加したところ、形態変化とともにTIMP-1の強い発現誘導が認められた。そのため、OSMの肝線維化促進作用はTIMP-1を介した線維の分解抑制によることが示唆された。しかしながら、肝星細胞の活性化の指標となるalpha SMA遺伝子やTGFb遺伝子の発現誘導は見られなかったことから、予想に反してOSMは肝星細胞の活性化には直接関与しない可能性が示された。そこで、肝星細胞の活性化が類洞内皮細胞を介したものである可能性を検証するために、野生型マウス由来の類洞内皮細胞の単独培養系にOSMを添加し、その培養上清をOSMR KOマウス由来の星細胞の培養系に添加した。しかしながら、星細胞の活性化は認められなかった。さらに、類洞内皮細胞と肝星細胞の共培養系でOSMの添加を行なったが、星細胞の活性化は認められなかった。以上の結果から、OSMのin vivoでの肝線維化促進作用は肝星細胞のTIMP-1発現誘導を介した線維分解の抑制と、類洞内皮細胞以外の非実質細胞を介した肝星細胞の活性化によるものであることが示唆された。
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